2001 11 26(月)    晴れ

 ◆◆◆   嵐の前の静けさ   ◆◆◆ 



長野電鉄の長野駅は地下にある

来年の3月末限りで、長野電鉄河東線の末端、通称木島線が廃止されることになっている。廃止直前になってからの駅めぐりは悲しく、また豪雪地帯にあたる沿線のため、もうしばらくすると、白一色になることが予想されるので、そうなる前に片づけてしまおうと、朝一番の新幹線で長野へとやって来た。雪に埋もれる駅というのも、それはそれで絵になるのだが、雪景色には、それだけでイメージを一変させてしまう魔力があるため、初めて降りる駅に関しては、できるだけ雪のない季節に訪れたい。これは夜の駅めぐりを避けているのと同じ理由だ。さすがに新幹線は速く、8時過ぎにはもう長野に着いている。2両の機関車の力を借りて、あえぎあえぎ碓氷峠を越えていたほんの4年余り前までは、とても考えられなかったことだ。多少交通費は高くついても、一日がフルに使えることになる新幹線による時間的な効果は大きい。ただし遠くへ来たという実感は湧かないが。



ホーム一本の無人駅にも年季が感じられる 中野北にて

長野電鉄にある乗り放題の切符は2日券しかなく、2770円と少々値が張る。しかし2日間でその価格なら格安のはずで、何度も乗り降りを繰り返す私には、そういう切符があるだけでとても助かる。さっそく窓口でその切符を購入し、電車に乗り込む。長野電鉄の駅は地下にあり、善光寺下までの2キロ程度の区間は地下を走る。地元では長野電鉄のことを地下鉄と呼んでいるようだ。とりあえず廃止となる区間の駅を先にやっつけてしまおうと、須坂で河東線に乗り換え、信州中野までやって来る。廃止が予定されているのは、信州中野から木島までの12.9キロで、なくなる駅は7つ。だが駅の時刻表を見て愕然としてしまう。信州中野までは毎時3〜4本の電車が走っていたのに、そこから木島までは、一時間半毎の運転と本数が激減していたからだ。そこそこ本数はあるだろうとたかをくくっていたのだが、これは随分と手強い相手に遭遇してしまった。



終点の木島も今は無人駅
ゆったりとした待合室はかつての栄華をしのばせる

幸い信州中野での接続はよく、とりあえず終点の木島まで行ってみる。車内はがら空きで数人の乗客がパラパラと散見できる程度だ。かつてはもっと本数があり、多くの人に利用されていたはずだが、並行するJR飯山線が活性化されて便利になったため、乗客はそちらに流れてしまったというのが現状だ。2ヵ月前に廃止された名鉄の揖斐・谷汲線も同様の理由によるもので、鉄道が鉄道を滅ぼすという悲劇は、今やそう珍しいことではなくなった。終点の木島も今は無人駅となり、待ち人のほとんどいない駅はガランとしている。駅前広場は大型バスが何台も停まれるほど広く、また威風堂々とした格式のある木造駅舎の待合室もゆったりとしていて、かつての栄華をしのばせる。駅が立派であるだけに、いっそう寂しさを募らせる。もうしばらくしたら、廃止を惜しむ人たちでゴッタ返すことになると思われ、さしずめ今は嵐の前の静けさと言えようか。



柳沢の駅舎は狭い島式ホームの上にある

駅めぐりには手強いと思っていた「木島線」だが、よく見ると、列車ダイヤは信州中野と木島の間を単純に行ったり来たりしているだけなので、上下の列車の組み合わせは比較的容易だ。それでもまだ時間を持て余すが、幸いなことに、駅間距離は2キロ前後と短いので、さらに歩きも組み合わせると、かなり効率よく駅を制覇できる。要するに折り返してくる列車を待つ間に一駅歩いてしまえばいいわけで、結果として同一方向へ向かう次の列車が来る一時間半の間に、4つの駅を制覇することができる。閑散線区が多かったJRの駅めぐりの時にはよく使った手口で、少ない列車を最大限に活用した最も効率のいい降り方といえる。駅舎のない簡素な無人駅が目立つが、四ヶ郷のように、オンボロな木造駅舎が残る駅もあり、駅との対面自体とても有意義だ。狭い島式ホームに木造駅舎が建っていた柳沢の駅も印象深く、間もなく降りられなくなると思うと、やっぱり残念でならない。



木造駅舎が残る信濃竹原
残念ながら待合室は施錠されてしまった

列車の組み合わせがスムーズにいったので、「木島線」の駅めぐりは午後2時前には早くも終わり、引き続き湯田中へと続く山ノ内線へと足を踏み入れる。こちらも運転間隔は一時間に一本と、かなり手強い路線だ。しかし上下列車の組み合わせはさほど難しくなく、わりとスムーズに進んで行ける。無人駅が多く、駅の造りや雰囲気は、「木島線」と似通っている。日没が早いので、午後4時過ぎに着いた湯田中で、今日の駅めぐりは終わらせる。一日の成果は14駅とあまりいい成績とは呼べないが、気がかりだった「木島線」が無事に片づいたので、ひとまずやれやれだ。ひどくのんびりとした駅めぐりとなったが、今回は駅の訪問と同時に、別れを告げに来たわけでもあるから、慌ただしく回るよりはいい。間もなく沿線は白一色に覆われる。しかし雪が溶けても「木島線」に春が訪れることはもうない。今はまだ実感として湧かないけれど、列車がやって来なくなる日は、刻一刻と近づいている。

 

この日の乗下車駅

長野電鉄
・長野
・須坂
・木島
・中野北
・信濃安田
・赤岩
・四ヶ郷
・田上
・柳沢
・上条
・信濃竹原
・夜間瀬
・中野松川
・湯田中

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

         
11月14日

11月27日